デリヘル店長はつらいよ

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デリヘル店長はつらいよ

「お疲れ様、今日はどうだった?」
「ダメ、今日もしつこかったよぅ。」
「あの野郎!わからない奴だなぁ。」
「ほんと辛い。辞めよっかな?」
「おいおい、それは勘弁してくれ!俺がなんとかするからさ、もうちょっとだけ我慢してよ」
「うん、わかったぁ。」
「これ、今日の分」
「ありがとう、じゃぁ帰るね。」
「お疲れ様、気をつけてな。」

 

疲れた顔をして、真美は事務所を出ていった。
彼女はうちのNo1だ。
最近、客のひとりにしつこく言い寄られているらしい。
店外もせがまれているそうだ。
今のところは何とかうまく交わしていると言う。

 

吉岡、33歳。
約3か月前からうちを使い出した。
この事務所から30分くらいのところに住んでいる。
最初の電話を取ったのは俺だ。

 

「はい、デリヘル●●●です。」
「真美ちゃん、お願いします。」

 

そのとき真美を指名してからずっと真美一筋だ。
毎月4、5回、もうすでに10回以上指名している。

 

指名客が増えたことを、真美は素直に喜んでいたが、ほどなくして付き合ってほしいと言われたそうだ。
真美は風俗嬢になって4年になる。
18のときにうちに来た。
もうベテランだ。
そういった客のあしらいもうまい。
そのときは、真美にやんわりさとされてすぐに引き下がったそうだ。

 

その報告を受けたのも俺だが、よくある話なので気にも留めていなかった。
告白を断られてから1週間ほどしてまた吉岡から指名が入った。
「また今日も言われたの」
告白のことを俺は忘れていたが、真美は帰ってくるなり怒りをぶちまけた。
今度はなかなかしつこかったらしい。
結構もめてサービス時間が少しオーバーしたのに延長にしなかったと訴えた。

 

「NGにする?」
面倒になる前に出禁にしてもいいと思った。
「ううん、まだ大丈夫だと思う。」
真美本人の言うことに従った。

 

嬢に熱を入れすぎる客は多い。
自分が一番の太客だと思っている。
週1回2時間程度でなにが太客か?
なのに勘違いして、自分が一番の男だと錯覚する。
嬢は自分に惚れている。
自分が指名してやらないと。
こうしてストーカーが一人出来上がる。

 

あまりしつこいと嬢からの報告を受けて店のスタッフが客に釘を刺す。
たいていの客は男のスタッフから電話があるとビビッてしまう。
そうして消えるかおとなしくなる。

 

吉岡もそうだと思っていた。
案の定店外の誘いなど、要求がどんどんエスカレートしてきた。
俺は少し脅かすことにした。

 

「デリヘル●●●店長の村井と申します。」
「あぁ。」
「真美さんのことなんですが、ストーカー行為は止めていただけますでしょうか。でないと・・・」
「ストーカー行為?ハハハ」

 

なにを笑ってるんだこいつは。
吉岡は俺と会って話がしたいと言う。

 

今から事務所に行く
もうタクシーに乗った
もう近くだ

 

話がおかしな方向へ向かっていた。
そして事務所のドアがノックされた。
なんであいつは事務所の部屋番号を知ってるんだ?
オートロックはどうした?
わけがわからず、ドアを開けた。

 

男が立っていた。
ひょろっとしていて顔も長い。
こんな男の相手して真美も大変だな、そんなことを思った。
「いきなりなんですか?帰・・・」
腹に鋭い痛みが走る。
押えた左手が熱い。
見下ろすと黒い棒が刺さっていた。
「ひぃい!」
奇妙な声を上げて吉岡は逃げていった。

 

なんなんだよ、あいつは?
なんで俺が刺されるんだ?
なんなんだよ、一体・・・。

 

目の前が真っ暗になった。